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コンコン…―
誰かが部屋のドアをノックした。
『夏奈、起きてるか?』
…兄だった。
『…起きてるよ』
『入るぞ』
『……うん』
私がそう言うと兄は部屋に入りベッドに座った。
『なんだか本当に久しぶりだな…
何喋っていいかわからないもんだな』
…自分から入って来たくせに。
『だって全然会ってないし』
私は、少し無愛想に答えた。
『…元気にしてたか?風邪とか引いてないか?』
『もう子供じゃないんだから、そんな心配いらないよ』
『そうか…ならよかった。
また仕事に戻らないといけないから、母さんの事、頼んだよ』
『…わかってるよ』
私たちを気にかけてくれるところとか口調とか、昔と変わらず当時の兄のままだった。
だけどまだ昔の兄を思い出すとどうしても納得がいかなかった。
『明日も夜までオフなんだ。
土曜日だからどっかに行かないか?』
私は少し戸惑った。自分の中のモヤモヤが気になり、何を喋っていいのか、どういう風に振る舞えばいいのか全くわからない。
『…久しぶりに会えたんだ。時間作ってもらってもいいか?』
照れ臭そうに鼻をかいて話す兄を見て、私は断る気になれず、渋々『うん』とだけ答えた。
本当に、このモヤモヤした気持ちは何なのだろう……?
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