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『じゃ、母さん、行ってきます』
『行ってらっしゃい。
諒は思いっきり羽のばしてらっしゃい。夏奈も楽しんでくるのよー』
母は笑顔でそう言いながら、出かける私たちを見送った…―
兄と私は目的地に着いた。出かけるのはいいんだけど、
公園って…。
思わず笑ってしまった。
『何笑ってんだ』
『ふふっ、だってお兄ちゃん、公園って…女の子みたい…!』
必死に笑いをこらえながら答えた。
『何も笑う事ないだろ。公園ダメだったか?』
『ううん、そう言う意味じゃないよ。
そういうとこ、やっぱお兄ちゃんらしいなって思って』
『そうか?
…一応人目につくのを避ける為でもあるけど、ここが一番落ち着くんだ』
なんとなくついて行っただけで今まで気づかなかったが、そういえばこの公園は、小さい頃私たちがよく遊んだ公園だった。
おままごととかよくやってたっけ…。
とても、懐かしい…
『やっと笑ったな』
『…!』
『お前、いつも無愛想な顔してるのか?
そんな顔ばっかしてると、幸せ逃げるぞ』
『なっ…レディに向かって無愛想は失礼ね。
元々こんな顔よ!』
今までずっと見られていたのかと思うと、恥ずかしくなって顔が真っ赤になった。グーで殴った。よくわからない気持ちが自分の中で大きく渦巻く。
『痛ぇなー。何するんだよ』
『…さっきのお返し』
普通にしようとするけど、うまく平常心が保てない。どんな顔をしていいのかわからない。
私の中のモヤモヤが更に広がっていく…
『…お兄ちゃんは何で芸能界に入ったの?』
『……それは…』
少し日が傾いて夕日が兄の顔をオレンジ色に照らす。
私はこの言葉をきっかけに、渦まいていた感情を吐き捨てるように言葉が出てきた。
『……私といるのが嫌いになったから…?
私がずっとお兄ちゃんにベッタリだったからうんざりして家出たの?』
『何言って…』
自分でもびっくりするくらい、次から次へと私の口から言葉がこぼれ落ちて来た。
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