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昔は
ふわふわしたものや可愛いものが大好きだったのに。
私の誕生日とかクリスマスにはいつもケーキとか作ってくれてたのに。
一緒に料理とかもしてくれたのに。
あの時、何でお兄ちゃんは自分の好きだった物を全部捨てちゃったの?
私は…―
『私は前のお兄ちゃんの方が好きだったよ…
可愛ものが大好きだったお兄ちゃん、料理とか裁縫が好きなお兄ちゃんが好きだったよ…』
モヤモヤ気持ちが何なのか、わかった気がする。
家を出て、テレビに出てる兄を見た時、私の知らない兄がいて、そんな兄を見てて私と兄は遠くかけ離れたとこにいるんじゃないか、だから簡単に兄に甘えちゃいけないんだと…―
だから私は兄をキライになった。
素直に気持ちを伝えられずにただ拗ねている可愛くない妹になってしまった。
気持ちを吐き出すだけ出して、それでもまだ足りなくて、ついに涙まで零れ出てしまった。
『夏奈…―』
ピルルルル…
兄の携帯の着信音が鳴った。
兄は携帯の画面を見て着信の相手を確認する。どうやらすぐ出なきゃいけない相手なのだろう。兄の顔が少し困ったような風になった。
『きっとマネージャーさんでしょ?早く出なよ。
私なら大丈夫だから…』
今更になって平気を装って笑ってみたが、涙が滲んでうまく笑えない。
言うだけ言って泣くだけ泣いて…しまいには恥ずかしくなって逃げ出したくなった。
『待て夏奈…っ』
私は兄の言葉を聞かずにこの場を走り去った。
もう空は太陽が沈み、星がポツポツと見え始めていた…―
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