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「ただいまぁ……」
本日の学業をこなして帰宅してきた僕は、すっかりくたびれていた。
そりゃそうだ。こんなにも苦労することになろうとは……。
これじゃ心を読み取る以前の問題だよ……。
どうしてこんなにも情報に固執するのかと言うと。
それは僕が心を読み取れる条件として、相手の事をよく知っている必要があるからだ。
これがこの特技の欠点、さっき言っていた穴だ。
簡単に読めるなら最初から尾崎さんに接触して会話から始めてるさ。
「あら、お帰り。遅かったのね、佑ちゃん」
僕がリビングに顔を出すと台所に居る母さんが暖かく出迎えてくれた。
どうやら夕飯の支度をしてくれているらしい。
ただ、もう小学生じゃないんだから佑ちゃんはやめて欲しいなぁ……。
「母さん、その呼び方はやめてくれっていつも言ってるだろ?」
鞄をソファーに置き、椅子に腰を掛ける。
「でも佑ちゃんは祐ちゃんでしょ?」
(ダメだ、会話になってない……)
しかも心の底から言っている分余計にタチが悪い。
「あっ、帰ってきたんだ。佑磨」
母さんの天然さに呆れ果てていた僕の後ろから聞き慣れた声が通る。
振り向くとそこには黒半袖に白ワンピを着こなした幼馴染がいた。
僕は深い溜息をつき肩を竦める。
「……また来たんだ。美沙」
「うわぁ……。何その嫌そうな反応。幼馴染がここにいちゃ悪いかしら?」
堂々とした態度。そして強情な性格。ただルックスもスタイルも普通以上に整っているせいで一概に文句が言えない幼馴染の「坂波美沙」だ。
「君の家は隣だろ?自分の家があるのに毎日何しにきてるんだよ。……まぁ聞かなくても知ってるけどさ」
テーブルに置かれているコップにお茶を注ぎ、そのまま喉に流し込む。
「じゃあ聞くな!……全く嫌味な奴ねぇ……ほんと」
「その嫌味な奴に惚れてる美沙はどうなるんだろうなぁー」
「むぐっ!」
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