第一章

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顔を真っ赤にして後ろを向く美沙。耳まで真っ赤になっているのがわかる。 それに微かに聴こえて来る。 『お、落ち着けあたし!今更何を恥ずかしがる必要がある!?』 (確かになぁ。それはもっともだと思うけど) 美沙の心の声が徐々に鮮明になっていく。動揺している心ほど読みやすいものはない。 「そう言えば祐ちゃん。美沙ちゃんの告白の返事、返してあげたの?」 不意にそんな話を母さんから聞かれる。僕は黙って首を縦に振って答えた。 「美沙は本当に一途だよ。こんな子が彼女だった凄く嬉しいな」 「そう…思うなら……早くOKしなさいっての」 ぽつりとそんな呟きが聞こえて来る。 「あらあら。甘酸っぱい青春ね」 母さんがふふふと笑った。 まるでどう言う風に決着がついたのかわかっている様な、そんな様子だ。 「当分は諦めてくれないみたいだよ。それどころか――」 僕は美沙の方を向くと、後ろを向いた筈が美沙は前を向いて立っていた。 「――僕が振り向くまでずっと待ってるってさ」 「簡単に諦められないほど大きいってことよ。覚悟しときなさい!バカ祐磨」 そのうち落とされちゃうかもな。そう思わざるを得ないほど眩しい笑顔がそこにはあった。 「じゃあそんな二人を応援して夕食にしましょうか」 母さんは着ていたエプロンを外し、盛りつけの終わった料理の山を運んできた。 「お、今日もおいしいそう」 「もちろん美沙ちゃんの分もあるから沢山食べてってね」 「ありがとうございます!」 三人で囲っての食卓。もはや見慣れてしまった光景だ。 本来ならもう一人……いなくちゃいけない人がいるけど……。 今となってはそんな事を気にする事もない。 「そう言えば、どうして今日遅かったの?居残り?補習?」 「何でそうなるかな?僕はそこまで頭は悪くないって。君も知ってるだろ?」 「からかっただけだってば。ジョークぐらい察してよ」 察しろって言われてもなぁ。……本心で問われてたから返しようがなかったんだけど……。
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