第一章

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「まぁ色々あったんだよ。クラスの子がちょっと気になってね」 「クラスの子?何かあったの?」 『もしかして事故に遭ったとか?』 「そんな大層な事じゃないんだけどさ。本ばっかり読んでて、誰とも関わろうとしない女の子が一人、うちのクラスいるんだ。それで気になって調べてたんだよ」 『うえぇ!?女の子!?こいつの口から女の子の話が出るとか考えられない!』 (……やかましいわ!) だだ漏れの心の声を耳にした僕はキッと美沙を睨む。 すると彼女は慌てて目を伏せた。 「ふ、ふーん。【見透かす】のに必要な情報をってことね。でも、あんたが自分から動くなんて珍しいじゃない?その子に何か言われたわけ?」 美沙の言った【見透かす】とは僕の才能を形容した言い方だ。 「善意は基本言われる前にするもんさ。今動いてるのは自分の意思だよ。ただ、誤解されないように言っておくけど、特別な感情抱くとか抱く以前の問題で、僕は彼女の事を全く知らないんだ。そんな事は天地がひっくり返ってもありえない。それだけは言っとくよ」 そう言った僕は温かい味噌汁を啜った。……うへ…シジミの砂が取れてない! 「……あそう。ま、まぁそう言う事にしておくわ。で?どうなのよ?その情報の方は?」 『なぁんだ。良かった……』 (ふぅ。こうでも言っておかないと、寝つきが悪くなりそうだからな) 美沙は一人になると不安になりやすいタイプだと言う事を僕は知っている。 よく隠れて泣いてるのを見かけたものだ。 「それが、全く情報が集まらないんだよ。叩いて埃のでない布団とでも言えばいいのかな。かなり皮肉を言ってるけど」 「そんなに!?一体どんなクラスメイトよ……。特徴とか趣味とか血液型とか……噂でも流れてきそうなもんだけど」 正直、まさか一人も知らないなんて考えもしなかった。 この先の情報収集が思いやられるよ。 「たまたまって可能性もあるし、明日も他を当たってみるよ」 「そ。上手く行くといいわね」 「ははっ。確かにな」 そう言って僕は唐揚げを口に運ぶ。……これ、から揚げ粉変えたかな?いつもの味付けと違う。 こっちの方がおいしいな。 そんな事を思いながら僕たちは温かな食事でお腹を満たした。
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