第一章

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高校生活二年目の春中場。 最初は不安だったクラス替えも「時間が経てば慣れる」という先生のお決まりの台詞によってその不安も徐々に緩和され始めていた今日この頃。 僕、橋本祐磨はのうのうと学園生活を送っていた。 一年前からほとんど変わらない授業風景、変わったのは窓際の席から見える景観だろうか。 以前は運動場も見渡す事が出来なかった一階の教室は現在、新一年生の教室となっている。 僕は温かい春風を頬で感じながらほんの昔の事を思い出した。 (入学してからもう一年か……) 長いようであっという間だった一年間の記憶を読む。 懐かしさを感じる訳ではないが、色々あった気がする。初めての期末テストや学校行事の合宿。 文化祭や体育祭。決してこれだけじゃないがパッと思いつく限りこんなものだ。 (我ながら普通な高校生活だなぁ……) 空想に浸る僕は、騒がしい昼休みの教室を見渡しながら昼食のサンドイッチを咀嚼する。 そんな僕、橋下佑磨の日課と言えば「人間観察」 人の心理は奥が深い。 それを知ってみたくなった僕は、こうやって時間があれば人を見るようにしている。 そのせいもあってか、今となってはある程度、人の考えている事が読み取れるまでに発達した。 ただ、この才能もいくつか穴があり、そこを突かれると読み取ることはできない。 (もう少しで何か掴めそうなんだけど……) 未だにその穴埋めは出来ていない。 何時になるかわからないが、そのうち埋まると信じて、今日も日課に勤しむ僕。 手元のコーヒー牛乳をグビリと飲み干し、サンドイッチの残りを頬張る。 ……うん。やっぱり、ハムとレタスにマヨネーズの組み合わせは最高だ。
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