第一章

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「尾崎冬華さんの事?」 「そう。何か知ってる事があれば聞かせてくれないかな?」 時はその日の放課後。 早速何かの行動を。と思い僕は去年尾崎さんと同じクラスだった子達から彼女の事について聞きに回っていた。現在、三十人中、九人目。しかも情報なしと来た。 ここらで何かの情報を仕入れておきたいところなんだけど……。 「うーん……あんまり尾崎さんと関わった事が無いからわからないわ。ごめんなさいね。役に立たなくて」 「あー……いや、気にしなくていいよ。時間とらせてごめん」 これで候補の約三分の一が名簿から消えた。 うーん……、こんなにも関わりがないなんてよく一年間も過ごしてこれたな? これじゃもしかすると何も得られず終いで終わっちゃうかも。 いざとなれば元担任の安藤先生にでも聞けばいいけど、あまりそんなことはしたくない。 後々面倒なことになるのが目に見えてるし。 部活で騒がしいグラウンドをベンチから見渡して、自販機で買って来た缶コーヒーを飲む。 野球部の気合が入った掛け声。陸上部の空気ピストルの発射音。校内から響く吹奏楽部の演奏。 体育館からはバスケットのドリブル音。時に混ざるバレーボールのスマッシュの力強い音。 放課後は本当に忙しい。それでいてみんな楽しそうだ。 (楽しまなきゃ損って上手い事を言ったもんだ) 人それぞれ楽しみ方なんて幾らでもあるけど、楽しみたいから部活に入ってるって考え方は有りだと思う。とゆうかそれが全てなんじゃないか?とか思ったり。だってやりたくない物をやってる人なんてほとんどいない訳だし、義務で部活をやる人なんてこれまたほとんどいない訳だし……、そう考えたら、こんな考え方に行きついたっておかしくはない。 寧ろ一般的に論議してみたいものだ。 (って、そうじゃなくて!尾崎さんの情報どうするんだよ?僕!) また変な考察を裏付けていたのを取り止めて、考えを元に戻す。 今から残りの二十人弱の人達を聞きに回るにはかなり効率が悪い。 もしかしたら部活もやってない人はもう既に帰宅しているかもしれない。 (そうなると……今日はここまでか)
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