第一章

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僕は深い溜息をつく。 柄にもない事をすると空回りする典型的なパターンだ。 こうも型にはまってしまうとは情けない。 「……こんな事、昔もあったけ?」 あの時も確か、こうやってベンチに座って夕焼けの空を見てた。 僕のこれまでの人生におけるたった一つの汚点。トラウマ。 小学校の頃。 クラスで一人ぼっちだった女の子を僕は助けようとした事がある。 仲の良かったグループに掛けあって仲間に入れてもらうように頼んだりとか、女の子のグループに嫌々言われながらも頼んだりとかもした。でも結局、どこも彼女を受け入れてはくれなかった。挙句の果てに最後にその女の子が言った事は、《私の気持ちも知らないで……何してくれてるのよ!そっとしておいてくれたらよかったのに!》 良かれと思ってやってた事が知らず知らずのうちに彼女を傷つける結末になったんだ。 誰かを救うなんて事は簡単に出来ない。痛いほど良く知った瞬間だった。 そんな記憶は今も僕の心の何処かで蹲っている。 そして時折こうやって夕焼けの空を目にした時に思い出すんだ。決して忘れないようにと。 「今度は、失敗なんてしないさ。絶対に」 待遇は良く似てる気がするけど、もう僕だってガキじゃない。 空になった缶コーヒーをゴミ箱に投げ捨て校門に歩いて行く。 「……ん?」 ふと風に舞う長い黒髪が視界を横切る。 誰かと思い瞬きして再度確認すると、その人物は僕の知っている人だった。 (……尾崎…さん?) 真正面から彼女を見るのは初めてだった。 黒く透き通る瞳に華奢な体つき。何処か大人びた顔に近寄りがたい雰囲気。 何処か寂しげな表情に、ふわりと微かに香る花の匂いを覚え、彼女の背中を見送った。 (今、花束持ってた?) 僅かの時間ではあったが、大事そうに花を抱えているのが見えた。 何の種類かは把握できなかったけど。 (にしても、寂しそうな顔してたなぁ……) 第一印象としては孤独。クラスに居る時から何ら変わってない。 やっぱりなんとかして直接【見透かす】しかないか。 その為にはまず情報収集からなんだけど……。 目的は見定まっているのに結局それまでの過程で躓く僕なのだった。
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