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「……んな見んな」
「痛そう」
お兄さんは俺の身体の
傷を指でなぞってきた
「ッ…やめ」
「今日から俺が守るからね
もう殴らせないから」
さっきまで一人称"僕"だったのに
"俺"になった
まあ、……どうでもいいか
お兄さんはそう言いながら
半裸な俺をぎゅうと優しく
抱き締めてきた
「………俺は男だ
守ってもらわなくて結構だ」
あぁ、俺ってほんとばかだよなあ
素直に嬉かった、そんな風に言われたのは
初めてでほんとに凄く嬉かった
なのに口から出る言葉は
全部反対言葉
「いいよ
勝手に守るから」ニコ
「……勝手にしろよ」
お兄さんはずっと俺を
抱き締めたまま頭を撫でている
「お兄さんさ」
「んー?」
「兄弟とかいんの?
俺を弟みたいとか思ってんのか?」
「僕に兄弟はいないし
弟だなんてみてないよ
暦君として見てる」
……僕に戻ってる
「……守るって言ったのは
お巡りさんの職務?」
「違うよ
俺が守りたいの
俺の意思で暦君を守りたい」
………守りたいとか
言われたのは生まれて初めてで
俺をこんな風に
優しく抱き締めてくれたのも
初めてで
どう反応していいかわからなくて
とりあえずお兄さんの背中に
手をまわしぎゅうと抱き締め返した
人の温もりっていいね
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