1.金曜日午後一時半。コンクリートが

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※ 「名取さん、無理です。どうしてわたしが班長なんですか?」  ヒカリが立ち止まり、振り返って訊いた。眼鏡が曇っている。 「伏せろ!」  背後から鶴見タロウが叫ぶ。トウコは反射的に伏せる。 「なんですか?」  状況を飲み込めないヒカリが伏せたトウコを見下ろしていた。 「伏せて!」  トウコが叫ぶ。ヒカリの胸にレーザーの赤い光が灯る。匍匐前進でヒカリに近づき、足を引っ張って倒そうとしたが間に合わなかった。銃声がしたかと思うとヒカリの胸が赤く染まる。衝撃で倒れる小柄な身体。 「いやっ!」  伏せろと言われたら伏せる。理由を考えるな。誰よりも早く指示に従え。それは入学以来、徹底して叩き込まれたことだ。躊躇していると──トウコはまた銃声を聞き、同時に、右肩に衝撃を受けた──こうなる。訓練服の肩がベットリと赤く濡れていた。  また銃声が聞こえた。
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