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「さっき連絡があってな。高千穂さんは、来ない」
「延期ですか!?」
「いや、高千穂さんは、このプロジェクトから手を引いた」
「ええっ──」滝沢はビジネスについては素人同然だったが、金にならない研究をサポートし続けるほど、投資家たちが気長ではないことは理解していた。
滝沢の手を握って《ラン》の素晴らしさ、中でも、強い日本を取り戻すという理念を称えてくれた高千穂の顔を思い出し、気分が沈んだ。しかし──
「じゃあ、出資先を探さないと。これからは現物でプレゼンできるから、銀行にも行けますね。ああ、そうだ。また重機メーカー回ってみます?」
ラン・システムは戦闘用ロボット「スサノオ」の汎用伝送ケーブルとして開発されていたが、デジタル情報やエネルギーが流れるケーブルなら、ほぼ全てに応用可能だ。しかも、自己再生可能。実用化もそう遠い未来ではない。滝沢はラン・システムには絶対の自信を持っていた。
「ちがう。高千穂さんは持ち株すべてを他の会社に売った」
「えっ!? ああ、ってことはスポンサーはもう決まっているんですね」
「ああ、資金力で言えば高千穂光学など比べものにならない」
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