1.金曜日午後一時半。コンクリートが

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「わあ! どこです? もしかして日立? あ、三菱──ああ!」  滝沢はポカンと口を開けて大学の先輩でもある宗田を見た。やがて表情を崩す。 「ついにやったんですか!? ついに防衛省が! 名取幕僚が動いてくれたとか!」 「おまえの未来はいつも明るいな。その調子でこれからも頼む」  宗田は苦笑する。 「先輩、教えてくださいよ」 「オベール。月曜までは他言無用だ。いいな」  滝沢智則は逃げるように立ち去った宗田武の後ろ姿を目で追った。追いかけて問い質したかったが、足が、まったく動こうとしない。立ったまま腰が抜けたようだった。いや、実際は、怒りで動くことができなかった。 (先輩──《ラン》は外国の会社に売られたってことですか?)  オベールはフランスの大手兵器メーカーの名だった。
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