誕生日

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「お~い、セレ!」 扉の前からする呼び声にびくりと身を震わせて扉を見つめる。あずまの声だ。 「どうした!?さっきから返事ないけど。飯できたぞ。」 セレは不規則に鳴っていた鼓動を静めようと深呼吸をしてから、努めて平静を装った声で答えた。 「すみません。今行きます。」 扉をあけるとあずまが心配そうに覗き込んできた。 「セレ・・。なんか顔色悪いけど、大丈夫か?」 「ええ、少しうたた寝してしまって夢見が悪かっただけです。呼び声に気付かず申し訳ありませんでした。」 「そうか?ならいいんだけど・・。」 本当にただの夢ならどんなにいいだろうかと思う。 彼女を失ってから、自分の中の冬は止まったままだ。 誕生日がきてもなぜ自分だけおめおめと生きながらえているのかと苦痛しか感じなくなった。
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