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照れたように笑う直樹に、ぎこちないながらも笑い返す。
直樹は笑って立ち上がった。
「ご飯まだでしたら、食べていきませんか?」
時計を見ればちょうど正午になるところだった。
「それでは直樹さんのご迷惑に・・」
言いかけた言葉を遮って直樹が言う。
「迷惑とか、思いません。
俺ができることくらいさせて下さい。」
そう言って食事の支度を始めた直樹に、セレは苦笑して座りなおした。
直樹さんがいてよかったと思った。
主であるあずまにも、その友人のエリー達にも弱みなど見せられない。
わずかな接点しかもたない他人の直樹だからこそ、少しでも弱さをさらけ出せるのかもしれなかった。
しばらく待ってでてきたのは、湯気を立てるチャーハンだった。
「はい。どうぞ、熱いから気をつけて食べてくださいね。」
目の前に置かれたチャーハンを食べる。
素朴な温かみのある味が胸を詰まらせた。
早起きして作ってくれた朝食も。コーヒーも、チャーハンも。
皆温かい味がした。
人の優しさが詰まったような料理に、泣き笑いのような顔で食べる。すべてたいらげると、直樹は満足そうに笑った。
「また、いつでもきてくださいね。」
笑顔で送り出してくれた直樹に礼を言い、帰路につく。
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