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「おかえり、セレ。」
玄関で出迎えてくれたあずまにセレは帰る途中に買ってきた土産を手渡した。
「ええ。これ、皆さんでどうぞ。」
土産を受け取ったあずまは複雑な面持ちでそれを見た。
「…今日はセレの祝いをする日なんだけどな・・。」
「いいじゃないですか。
私からも感謝の品ですよ。」
笑って言うとあずまもしぶしぶ納得したようだった。
本当は、こちらの方が感謝してもしきれない。
温かい居場所を、くれた人達。
その場に見合う価値が自分にないとしてもその場をくれた人には変わりない。
自室に戻ると、机の引き出しをあけた。
奥の方に仕舞った小箱を取り出し、握り締める。
彼女と分けた、指輪の片割れ。
冷たくなっていく彼女の指に、永遠の愛を誓ってはめた片割れは、今は彼女と共に眠っている。
指輪を握り締め、眼を瞑る。
そのままベットに寝転がり、箱を抱き締めたまま眠った。
―これ以上なにも考えたくなかった。
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