誕生日

24/25
前へ
/27ページ
次へ
天翔の胸元にしがみつきひとしきり泣いた後、ようやく涙の収まったセレに天翔がハンカチを差し出す。 「うわ、ひでえ顔。」 苦笑する天翔にセレはむすりとして答えた。 「…うるさい。」 今の自分の顔はさぞ醜悪なことだろう。 自分でも瞼が腫れて瞳が充血しているだろうことが分かる。 「今冷やすもん持ってきてやるから、ちょっと待ってろ。 そんな顔あずま坊ちゃん達に見せたくないだろ?」 そういって室をでていこうとした後姿に。 セレに背を向け一人組織に立ち向かっていった過去の姿が重なる。 気付けば天翔の服の裾を掴んでいた。 「ジン?」 「…行かなくていい。すぐ治る。」 天翔はセレの様子を見ると一つ頷いて笑った。 「そっか、分かった。」 セレはほっとして手を離した。天翔はしばらくセレを眺めていたかと思うと、上着のポケットに手をいれて何かを探し始めた。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加