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天翔の胸元にしがみつきひとしきり泣いた後、ようやく涙の収まったセレに天翔がハンカチを差し出す。
「うわ、ひでえ顔。」
苦笑する天翔にセレはむすりとして答えた。
「…うるさい。」
今の自分の顔はさぞ醜悪なことだろう。
自分でも瞼が腫れて瞳が充血しているだろうことが分かる。
「今冷やすもん持ってきてやるから、ちょっと待ってろ。
そんな顔あずま坊ちゃん達に見せたくないだろ?」
そういって室をでていこうとした後姿に。
セレに背を向け一人組織に立ち向かっていった過去の姿が重なる。
気付けば天翔の服の裾を掴んでいた。
「ジン?」
「…行かなくていい。すぐ治る。」
天翔はセレの様子を見ると一つ頷いて笑った。
「そっか、分かった。」
セレはほっとして手を離した。天翔はしばらくセレを眺めていたかと思うと、上着のポケットに手をいれて何かを探し始めた。
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