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それまで、母が死んでからも仕事に精をだし仕事面で有能な父を尊敬していた。
大きくなったらこの人のようになるのだと、必死に勉強をした。
元々勉学は嫌いではなかったし、父も様々な勉学を勉強できるように配慮してくれた。
なのに。
『お前には、王宮で働いてもらう。その為に、お前には様々なことを教えてきた筈だ。』
親身に勉強を教えてくれたのも、自分の為ではなかった。
自分の身と引き換えに、大量の金銭を貰ったらしいという話は、城に住み込みで勤めはじめてから王宮の役人に聞いた。
厄介払いをするなら最初から生まなければよかったのに。
いや、金銭を手に入れた分、「役に立った」のだろうか。
王宮での暮らしは風当たりが強く、ひどく苦痛だった。
自国のアイルナ人が多く人口を占める国で、異国のラオクス人の母の血を色濃く受け継いだ自分は王宮内で異質に見えたに違いない。
ただでさえ、ラオクス人の植民地支配を受けた歴史を持つ国だ。現国王がラオクス人を含む外国人を国に受け入れるといったときも、多くの民が反対したという。
国での、ラオクス人の血が入った自分は、忌み嫌われるものだった。
そんな自分の任された仕事は、年下の王子の世話だった。
自分と同じ様に、ラオクス人を母に持つその王子は、王宮内でも腫れ物のように扱われていた。
見かねた国王が同じ境遇である自分を側においたのだと、後で聞かされた。
国民のひんしゅくを買いはしても、親の愛を受け、無邪気に笑うその子供は、自分にとって憎しみの対象でしかなかった。
この王子さえいなければ、自分は売られることもなかったのだと思った。
必要とされない存在だと自覚したのは、それが最初だった。
今ではその王子が同じように苦労してきたことも知っているし、支えになりたいとも願う。
だけど、笑顔を向けられるたび過去の自分の醜悪な感情を思い出し、自分に側にいる資格があるのかと自問する。
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