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身支度を整えたセレは、朝食の支度をするために重い足を動かした。
ダイニングに向かい、首を傾げる。朝早いというのに、中から人の気配がする。
扉を開けると、なぜかエリーと今はあずまと名乗る王子がいた。
「あ、セレさん!」
エリーが慌てたように声をあげる。あずまはその声にぎょっとしてセレのほうを振り向いた。
「ぅえっ!?セレ!?」
二人して酷く慌てた様子なことにセレは訝しがりつつ尋ねる。
「お二人ともこんな朝早くからここで何をなさっているんですか?」
あずまはうっと小さくたじろいでから決まり悪げに呟いた。
「いや・・いつもセレに食事作ってもらってるし、その、今日くらいは俺達で作るかって話になって・・。」
「セレさん来る前に作って驚かそうと・・。」
エリーも苦笑しながら答える。
「そう、だったんですか。…ありがとうございます。」
笑顔で礼を言うと、二人は照れたように笑った。
「さ、そういうわけだから、セレさんはご飯出来るまでリラックスしててください!」
エリーに押されるようにしてダイニングを後にしたセレは、回廊を歩きながら顔を伏せた。
早起きして、自分の為に食事を作ってくれたという二人。
嬉しかったから、笑顔で礼を言った。
…ちゃんと笑えていただろうか。城で身に着けた作り笑いは、いつしか自分の普段の表情になっていた。
今では自分が本当に笑っているのか無意識の作り笑いを浮かべているのかさえ判別できないほどに。
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