0人が本棚に入れています
本棚に追加
向こうから人の歩いてくる気配を感じ、顔を挙げればバットがいた。
バットはこちらと眼が合うとあからさまに嫌そうな顔をして、眉をよせた。
人間が嫌いだという彼には、自分はあまり好かれていないようだ。
「・・一人のときでもへらへら笑うんだな、お前は。」
バットの声にセレは一瞬眼を見開いて、次いでいつもの笑顔を浮かべた。
「笑う角には福来る、なんて言葉もありますし、笑うことにマイナス要素があるとも思えませんよ?
だったら笑顔の方がいいでしょう。」
「…お前みたいな胡散臭い笑顔の奴は信用ならん。
見るだけで不愉快だな。」
バットは言い捨ててさっさとすれ違っていってしまった。
「胡散臭い・・ですか。」
呟いてセレは苦笑いした。
笑顔をつくるのは自信があったのだが、どうやら通じなかったらしい。
自室に戻り、ベットに腰掛ける。
窓の外をぼんやり眺めながら、思い出す。
思い出したくもないのに、もう一つ、誕生日を喜べない理由を。
いや、誕生日だけでなく、この冬すべてが嫌いな理由を。
最初のコメントを投稿しよう!