0人が本棚に入れています
本棚に追加
今から十年前だ。・・・自分が地獄に落ちたのは。
逃亡した主を探し、国中を渡り歩いていた時。
町でごろつきに襲われていた子供を助けたのが今思えば地獄への入り口につながっていたのだ。
ごろつきと思っていたその男達は、犯罪組織の一員だったようだった。
子供を助けた翌日、得体の知れない男達に囲まれ、誘拐された。
犯罪組織の根城であるそこは、悪意の吹き溜まりのような場所だった。
毎日組織内で殺し合いが行われ、生きるために他人を蹴落とすような場所。
テロリストに協力をしているらしいというその組織は、毎日仕事があった。
時限爆弾を人間の体内に埋め込み、その人間をテロ活動用にテロリストに渡していた。
当然捕らわれていたセレもそれに加担させられることになった。
最初は光景をみただけで嘔吐し、体の震えが止まらなかった。
そこで、笑顔の次に心を閉ざす術を学んだ。
外から入ってくる情報を他人事のように扱うことで精神を保とうとした。
自分が扱う相手はものであると、思い込もうとした。
機械的に作業することでなんとか平常でいられた。
しかし、地獄はそれだけでは終わらなかった。
組織のリーダーと、その幹部は、残虐非道な男達だった。
他人をあざ笑い、蹴落とし踏み潰し笑うような狂った奴らだった。
他人を傷つけて愉しむそいつは、拷問が趣味といっても過言ではなかった。
毎日あざ笑われ、踏みつけられ、持っていた自尊心もすべて粉々に砕かれた。
心が壊れそうだった。
最初のコメントを投稿しよう!