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《縁側》
夏の夜の縁側で
役にも立たない猫を抱いて
君にこの重さを
教へて上げれば善かったなぁと
今更ながらおもうのです。
借りる価値も無い前足の猫も
この暑苦しい夜にさえ
抱かれる資格があるのだと
僕の腕の中
ぐにゃりと力なく弛緩して
なすがままになぶられて
そのくせ時折思い出したように抗って
みたりするその黒猫の
抱えて座るに塩梅良いその重みは
君をとても思い出させます
役に立たないとか
みっともないとか
数々の身の内の言葉に苛まれても
君は僕に抱かれているべきだったのです
真実価値のあるものなど
この世にありはしないのだから
だから、君にもう一度
会いにいけたらいいのにと、
蚊取り線香燃え尽きるごとに
新たに火を付けおもうのです
役にも立たない猫を抱いて
ひとり真夏の縁側で
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