恋愛起源説

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《猫》 呼べども呼べども答えぬ声や あたしを頼めて来ぬひとを 恨みつらみのその果てに 二つ生いるは角ではなくて ありえぬ声を只探す 薄くて大きな猫の耳 乾いた風に目が痛み 涙も湧かずにただ閉ざす 穢い言葉は世界を汚し 指先の毒はひたひたと やがて海へと至る筈 それでもあたしは目病みの子猫 潰れた片目でにゃあと鳴く 憐れに思え 捩れ尾を 巻いて固めて縛って歪めて 纏足は、うるはし 嗚呼目が痛む 目が痛む どうせあたしは目病みの子猫 貴方の脚に絡みつく
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