恋愛起源説

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《ぬかるんだ音》 口に突っ込まれたゆびは ひどく濡れている 午前二時の乾いた部屋 いくら舐めても取れないぬめりと 浮かされたままの熱 ぬかるんだ音がしずかにひびく きつくしがみつく背中 あたしを支えてくれる腕 そんな、幻想 あるいは願望 けれども 有機物、とはすべて 水に溶ける理なので。 ぬかるんだ音で、 結合は ゆるむ どこまで行っても皮膚は れっきとしてそこにあって あたしときみを隔てるというのに。 どこまでも溶け合う 溶け合える 繋がれる 分かり合える そんな妄想。 そんな、理想。 ぬかるんだ音がする。
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