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「沖田君、元気で...」
私達に背を向けている吉田さんが静かな声で確かにそう言った。
初めて沖田さんの名をフルネームで呼ばなかった。
その声は、まるで友達を心配するかのような響きを持っていた気がする。
「ま、別に死のうが僕には関係無いけど...」
最後に吉田さんは、クスクスと忍び笑いをして、私達から立ち去っていった。
一体...吉田さんは何しに来たんだろうか?
意外性を追及するならば、沖田さんの様子を見に来たとか?
ま、まさか...ってそんなことを思っている場合じゃない!!
「沖田さん!!」
私は、倒れている沖田さんに駆け寄って抱き起こす。
脇腹の傷は、そんなに深くは無いもののかなりの出血をしていた。
初めてでは無いが、やっぱり血を見れば胃物が口から噴射しそうだ。
「傷口は、深く無い。山崎に頼もう」
「...は、はい」
刀を収めた斎藤様が沖田さんの傷と顔色を窺い、そう言った。
私達の間には、ちょっとした距離があったかのように感じられた。
――――
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