第五章

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十二月も終わりに近づいた頃。 ある日の夜に私はこの寒い中、縁側に座って月を眺めていた。 「う...ケホッケホッ」 口に手をあてがい、乾いた咳を何度か繰り返す。 これじゃあ、月見どころじゃない。 ほんと、自分どうしたんだ? やっぱり風邪ひいたのかな。 この時代で風邪をひいたら厄介だよ。 パブロンは無い、熱冷まシートも無い。 不便な時代だねぇ。 いや、平成が便利すぎるのか。 「ゲホッ...、はぁ...」 月に向かって溜め息を吐いた。 吐く息が白い。 すると、冷たい風が屯所の庭が通った。 うぉ寒いなぁ。 ブルブルと体を震わせていると突然、フワリと羽織を肩にかけられた。 落ち着いた香りがする羽織。 振り向かなくても分かる。 私は、頬が緩むのを感じつつ後ろを振り向いた。 そこには、斎藤様が... あれ?いない...。 後ろには斎藤様が居なかった。 じゃあ、この羽織は? 「こっちだ」  
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