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十二月も終わりに近づいた頃。
ある日の夜に私はこの寒い中、縁側に座って月を眺めていた。
「う...ケホッケホッ」
口に手をあてがい、乾いた咳を何度か繰り返す。
これじゃあ、月見どころじゃない。
ほんと、自分どうしたんだ?
やっぱり風邪ひいたのかな。
この時代で風邪をひいたら厄介だよ。
パブロンは無い、熱冷まシートも無い。
不便な時代だねぇ。
いや、平成が便利すぎるのか。
「ゲホッ...、はぁ...」
月に向かって溜め息を吐いた。
吐く息が白い。
すると、冷たい風が屯所の庭が通った。
うぉ寒いなぁ。
ブルブルと体を震わせていると突然、フワリと羽織を肩にかけられた。
落ち着いた香りがする羽織。
振り向かなくても分かる。
私は、頬が緩むのを感じつつ後ろを振り向いた。
そこには、斎藤様が...
あれ?いない...。
後ろには斎藤様が居なかった。
じゃあ、この羽織は?
「こっちだ」
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