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街の片隅のとある場所に、それは建っていた。
その建物のドアの上にはLUTEE(ルティー)という文字の看板が掛けられている。その建物は外壁が白いレンガで組まれていて、パッと見綺麗に見えるのだが、よく見るとそれほど綺麗でもない。どうやら洗ってもすぐには落ちないタイプの汚れがついているらしい。
そんな建物に近づく七、八歳ほどの一人の少女がいた。少女は少し困惑しているかのような顔つきで、恐る恐るその建物のドアを開ける。中はさらに殺風景。部屋の中央に机と椅子があるくらいで他にあるものと言えば……冷蔵庫だろうか。生活用品がほとんど揃っていないんじゃないかと思えるようなくらいなにもない。
そんなことを思いながら部屋の中を見渡していると、部屋の奥に見えるドアが開き、中から若い感じの男性が上半身裸で出てきた。なかなかの体格をしている男は銀色の髪をしていて、その瞳は金色だった。少女は見たことのないその瞳の色に少し驚きながらも、男性を見ていた。
「はぁ……なんか腹の調子が悪いんだよなぁ。やっぱ胃薬ちゃんと飲まないと駄目だな」
ため息をつきながら独り言を言い終わった後、その男は目の前にいる少女に気がついた。
「あれ、どうしたのお穣ちゃん? かくれんぼで人の家に勝手に入り込んできちゃ駄目だよ」
「か……かくれんぼじゃないもん! ここって依頼すればなんでもやってくれるお店なんでしょ?」
少女は少し怒り気味で言い放ちながら、疑問に思ってることを聞いた。
「そうだけど、かくれんぼの隠れ場所にするって依頼はちょっと……」
「だから違うってば!」
少し怒り気味だった少女は遂に本気で怒り出した。
「あ、そうなの? じゃあ何かな? 依頼を受けるっていってもお金がいるんだけどな」
「お金は後で払うから。だから、セリナと一緒に来て」
セリナというのは少女の名前らしい。自分のことを名前で言う辺り、やはり子供だ。
「ちょっと待ってよ。来てってどこに? なんで?」
セリナは少し沈黙した後に言った。
「あのね。セリナが大切にしてたクマのぬいぐるみを失くしちゃったの。お願いだから一緒に探して」
どんな依頼かと思いきや、クマのぬいぐるみを探してほしいということ。男は少し緊張感が溶けたような面持ちになった。
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