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先生は俺の隣まで来ると、俺の抱える段ボール箱をまじまじと見て苦笑った。
「…また斎藤先生か。あの人も酷いな」
茅原くんの優しさを利用するなんて。
…最初は腰を痛めた先生を心配して手伝っていた。でもその内、あの先生は俺が断れないのを知っていて押しつけるようになっていった。
たまたま現場に居合わせた早水先生は、実は俺の唯一の理解者だったりもする。気付いてくれただけでもありがたいのに、度々気にかけてくれている。
「大丈夫?顔色悪いけど」
「…平気です。多分、疲れてるだけなので」
動物園の見せ物じゃあるまいし、四六時中視線を投げられ、陰から囁かれ…少しは慣れた方だけど自分が思うよりかなり疲れてるらしい。…嫌な慣れだ。
「じゃあ俺、荷物あるので行きます」
「うん。気をつけて。…あ、そうだ」
浅く会釈して顔を上げると、先生は俺の肩に手を置いた。
「本当に辛くなったら、まず屋上に行くといい。それから図書室の開かずの間の前と、使わなくなった第二放送室、生徒指導室なんかは…一人になりたいときに丁度いいよ」
「あ…ありがとう、ございます」
頑張ってね、と意味深な言葉を残して先生は立ち去っていった。
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