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毒々しい真っ赤な空、炭のように黒い大地、文字通りの血の海…
それらを見渡せる岩山の上で“竜王”は、1人胸を高鳴らせていた。
「…遂に…遂に今日という日が来た…っ!」
金属のような光沢を放つ鉄色の鱗に包まれた体は、巨大なトカゲを彷彿とさせるような姿をしている。
しかし、トカゲとは違い、その背中には蝙蝠のような太い骨と薄い皮膜で出来た大きな翼が生えていた。
人間界でドラゴンと呼ばれる種族の彼は、興奮と喜びに満ちた声を牙の間から零すと、眼下へとその金色の瞳を向けた。
そこには、赤や青といった色違いのドラゴンが数百…数千頭と立ち並び、竜王を見上げ、今か今かと竜王の言葉を待ちわびていた。
「同胞よ!遂に今日という日が来た!我ら誇り高き竜族の願いが叶う日が!!」
「「おおーッ!!」」
「我らの願いを聞き入れし、魔王陛下に忠誠を!!」
「「忠誠を!!」」
「我ら竜族に繁栄を!!!!」
「「繁栄をッ!!」」
「いざゆかん!栄光の時へ!!!!」
「「ウオオォーッ!!竜王万歳!!竜族万歳ッ!!」」
地響きのように天地を震わせて響き渡った雄叫びは、竜族の喜びと期待に満ち満ちている。
竜王は、満足げにひとつ頷くとバサリと巨大な翼を広げ、空高く舞い上がった。
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