一章 北の街で

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「ごちそうさまっ!」 蒼穹は時間いっぱいでせわしなく動くも 自分の食器は重ねた後に台所へ運ぶ この辺りは両親の教育が行き届いている といったところである 「あ!蒼穹!ホラホラ 薬忘れてるよ」 「あ!そうだった」 蒼穹は母親から水とカプセル状の薬をもらうと一気に飲み込み ありがと と言いながら母親にコップを渡す 蒼穹は この1ヶ月に一度飲む薬について 以前 疑問に思い 父親に聞いた事があった その時の父親の返答は 「成長ホルモンを促す漢方薬だよ ほら 蒼穹は年齢の割に発育が遅いからな」 と冗談混じりに言われ 「お父さんのバカ!馬鹿馬鹿!セクハラだよっ!」 と父親の意地悪な返答に もう二度と聞くもんか と心に誓った事がある しかし父親の言う事もあながち間違っていないのも事実で 中学3年になったにしては 身長も150センチにまだ届かず 胸もBカップになった…と言いたいが まだそこまで成長に至っていない せっかくの栗色の肩まで伸びたクセのないストレートヘアーも 学校の校則ではまとめなければならず ポニーテールもしくはツインテールを余儀なくされている しかしその髪型が幼児体型に拍車をかけているようで 学校の友達からすれば 「ロリ系に拍車をかけてる」 と小馬鹿にされてしまうのだ 「ふ …ふんっ! 私は後半伸びるタイプなのっ! 見てなよっ! 来年高校生になったら ボン キュッ ボン になって皆を見返してやるんだからっ!」 鏡で歯磨きをしながら 蒼穹は自分の姿を見るたび そう考え 歯磨きの手に力が入るのだった
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