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不安を吐き出す。同時に涙がこぼれる。
弱々しくなった生徒を、木村はしっかりと見ていた。泣きながら座り込む。
待っていた。
野村が不安を吐き出す時を。
「俺……黒田さんどころか……内田や高橋さんにまで置いてかれそうで……足……また捻りそうで恐いし……もうどうしたらいいかわからな…
「間に合う」
崩れそうな野村を支えるような一言。
堂々と、そして真っ直ぐに見つめる瞳が突き刺さる。
(嘘だ……強がりだ……)
拒もうとする野村の両肩を木村は掴む。
「俺を信じろ野村。もう二度とお前に捻挫させない、そして、お前をあの世界に立たせてみせる」
(う……そ……)
強がりじゃない。確かな自信を持って木村は言っている。
野村の涙が更に溢れるところで、木村がそれを止めようとする。
「泣くな野村……立て、野村」
木村が先に立ち上がる。
「う……うう!」
いっぱいの涙をこらえながら、野村はゆっくりと立ち上がる。
(頑張れ……野村……)
もう一度前を向け。
まだお前は若い。
何度だってやり直せる。
そして、
何度でも「目指せる」
木村の思いは……
十分に伝わった。
立ち上がった野村は両腕を使って一気に涙を拭き取る。
涙を除いた瞳には久々に輝きが見えた。
「俺……バドミントンがしてえ」
その言葉に木村は思わず微笑んだ。
野村の中の迷いを木村は取り除いた。
誰かを信じられるからこそ、悲しいこと、辛いことを乗り越えられる。
それは木村がかつて生徒達に教えてもらったこと。
野村にもしっかり伝わっただろう。
約3週間に近い野村の挫折は、木村によって救われた。
野村はインターハイ予選に向けて始まった第2章は完全に出遅れた。
だがまだ間に合う。
彼が諦めず「いま」を進もうとすれば、
必ず間に合う。
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