野村仁 、10月

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次の日の部活。 練習前に木村が部員を集める。 急にどうしたのか、部員は嫌な予感しかしない。 だが、 「今日から野村は部活に復帰する」 「……………は?」 全員が拍子抜けする。 復帰も何も、その場に野村はいない。 「先生、復帰……って野村いないですけど……」 高橋が言うと、内田があることに気づく。 「あれ?そういや田川は?」 そう、マネージャーの田川もいない。 「先生、野村はどこなんです?」 春日が言うと、木村はただ一言。 「野村は 別メニューだ」 「はあ……はあ……」 ゆっくりと息を吐きながら、野村は相当遅めなランニングをしていた。 それでも一歩一歩進んでいく。 田川は後ろから自転車でゆっくりとついていく。 「野村君!もう少しだよ!ガンバ!」 慣れない声出しをした。それも野村個人に向けたのは初めてかもしれない。 野村が田川に好意を持っていることも十分に知っている。 だが、そんな田川がどことなく遠慮する前で、野村は構わず走る。 今彼の頭の中ではそれどころではない。 木村のところに部活前に行く。 その日のメニューを渡される。 三時間を超えるには十分なぎっしり詰まったメニュー。 リハビリを兼ねた筋トレが始まったのだ。 そのメニューに対して野村は何一つ不満に思わない。 それで勝てるならそうするまで。
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