野村仁 、10月

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「…………」 もう夜も遅い。たが野村には今の時間がわからなかった。 「…………」 隣には木村がついていた。 念のためレントゲンを撮ったあと、二人でその結果を待っていた。 「野村」 「……はい」 「どうしてバドをした?」 木村が静かに言う。野村にとって、その質問に答えるのは心が痛い。 「捻挫はな、癖になりやすいんだ、バドにとって捻挫は天敵だ。ちゃんとリハビリをしなきゃいけない」 「……すいません」 謝るが、野村に木村の言葉はあまり届いていなかった。 足を怪我した現実が重くのしかかっていた。 更に彼の脳裏に過るのは、フォア奥へ飛び付いた時に右足を挫く感覚。 それを思い出す度に背筋に寒気がし、足に痛みが生じる。 この痛み…… 恐怖感…… また元通りにバドができるのだろうかと思うほど、彼は今不安に押し潰されていた。 黒田や竹内がはるか遠くにいるようだ。 近づくどころか……離れていく。
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