野村仁 、10月

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松葉杖は必要無かったが、しばらくは足を引きずりながら歩くことになるだろう。 1ヶ月は安置。 まともに復帰するには2ヶ月以上はかかるだろう。 (2ヶ月……) 辛さで閉じそうな野村の心に追い討ちをかける。 (強くなるどころか……弱くなるじゃんかよ……) 野村の顔は上がらなかった。 木村はその様子を見ながら今後のことを考えていた。 目の前で絶望した生徒。 まるで一昔の自分のようだ。 (今度は俺が、お前らを引っ張る番だからな) 野村のことを決して見捨てない。 木村はその日野村のことだけを考えていた。 だが次の日、 「明日とりあえず部活に顔出せ」 木村はそう言っていたが、 野村は体育館に来なかった。 「先生、野村は!?大丈夫なんですか!?」 木村に会いすぐに聞いてきたのは高橋だった。 普段は気にもとめないが、野村のことを何気に心配している男だ。 「野村はしばらく離れる」 ミーティングの時の木村の言葉に、士気の高まる生徒達が固まる。 「だがあいつは必ず戻ってくる。俺は信じてる。だからお前らも信じてやれ」 「…………」 どうすれば?何をしてやれる?そんなことを考えるが、木村はそれに対して簡単に答えを与えた。 「お前たちはバドに集中しろ、あいつは大丈夫だ」 根拠もなくそう言う。 野村の明るい性格なら怪我なんて気にしないだろう。 みんなにそう思わせたかった。
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