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野村は屋上にいた。
家には帰らず佇んでいた。
皮肉にもその場所は、かつて木村や相馬が逃げるようにタバコを吸っていた場所だ。
ズキツ
右足の奥から体全体へとその痛みが伝わってくる。
(…………)
その痛みが彼を苦しめていた。
彼の脳裏に過る怪我した瞬間は全く頭から離れない。
挫いた感覚。
癖になったのは体だけではなく、
恐らく心も……
思い出すと微かに体が震えていることに野村は気づく。
「時間ねえのに……何してんだよ俺……」
怪我のタイミングの悪さが彼の心を砕く。
何より彼は今、
前みたいにバドができるとはとても思えなかった。
生まれて始めて、バドをすることに恐怖を感じている。
捻挫を舐めた結果だ。
(どうしたらいいか……わかんねえ)
彼はただ黙りと、青い空を眺めていた。
その目からは涙がこぼれる。
バドができない状況など、彼には耐えようがないのである。
体育館になど行きたくなかった。
体育館で皆にどんな顔をしたらいいかわからない。
彼は次の日も、その次の日も体育館には来なかった。
そして彼の放課後は屋上で過ごすことが日課になりかけていた。
携帯のアプリゲームの単純な動きを繰り返し、目で追うだけ。
サッカー部や野球部の掛け声が響くなか、野村はただ孤独だった。
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