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ズキツ……
痛みが響く。
午後の授業が始まったのに、野村は屋上へと逃げてしまった。
(…………)
野村の頭の中にあるのは内田の言葉ではなく、田川の心配した表情だ。
それが自分のせいだとわかっていても、どうもできない。
バドがしたいのかしたくないのかもわからない野村は、体育館に行く勇気などない。
(やべ……サボっちまった……)
授業をサボったのは始めてだ。
どうしようか迷ったが戻る勇気はない。
「はあ……」
ため息をつく。
空は今日も快晴。
そんな空をまた眺めている時だ。
「らしくねえな」
誰かの声がする。そしてまた同じようなことを言われる。
「相馬?」
自分の横にいるその男の存在に驚く。
「お前、何授業サボってんだ?」
「それはお前もだろ!」
「まあ、俺前までサボり常連だったしな」
野村のつっこみを軽く切り返す。
「……ふん」
目を逸らし、野村はグラウンドを眺める。
「…………」
相馬も野村もしばらく黙っていた。
だが、野村の方が我慢できなくなる。
「お前、何しに来たんだよ? 」
「何しに来たってここは俺が元々よく来てる場所だ。俺と木村先生の喫煙所だった」
「き、喫煙って……タバコ吸ってんのか!?」
「昔の話だ」
また軽く切り返される。
「俺もあの人ももうここにはいない。木村先生は変わった」
「……変わった?」
その意味を野村はわからない。
「今あの人はバドミントンをしている、本格的にだ」
「……」
(じゃあ木村先生と一緒に練習してんのか?……いいな……)
そんなことを考えていると、相馬は勝手に話し始める。
「お前、いつまでもそんなしてるんならタバコでも吸ってろよ」
「はあ?吸うわけねえだろ、タバコ吸ったら体力落ちんだろ?」
そう言うと相馬は少し笑う。
「ふ、やっぱバドのこと意識してんじゃねえか」
「……あ」
野村が黙る。
「お前にここは似合わないよ」
何か台詞を照らし合わせるように相馬は野村に向かって言う。
それは相馬が木村に言われた言葉だ。
「……意味わかんね」
野村がそう言うと、相馬はその場を離れようとしながらもう一言、
「なあ野村、バドすることだけがバドの練習なのか?俺は違うと思うぞ、お前の足りないもの、技術だけじゃないはずだ」
そう言って相馬は去っていく。
「…………」
何も言い返せず、野村はただ途方にくれていた……
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