野村仁 、10月

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「部活の時間の前に俺んとこに来い」 毎日のように木村は野村に声を掛ける。 そして部活が始まっても職員室の机で野村を待つ。 だが野村は来ず、木村は席を立つと、更衣室でスーツを脱ぐ。 バドのできる格好をすると、木村は体育館に向かう。 生徒たちに迎えられながら、木村は念入りなアップを始める。 桜井の指示で練習メニューは進んでいく。 新人戦の前とは丸っきり練習メニューが変わる。 基礎練習だったメニューは応用メニューに変わった。 パターン練習が中心となる。 ダブルス組はスマッシュ無しフリー。 スマッシュが禁止であり、それ以前にロブが禁止。 ドライブ、プッシュ、ヘアピン、使うのはそれだけだ。 とはいえ、ドライブでの攻め、そしてローテーションの練習になる。 この練習に相性がいいのは桜井・相馬だ。 日に日にドライブとローテーションのスピードが上がっている。 攻撃力は申し分無い。 内田・春日は逆にこういった練習は相性が悪いが、春日の積極的な前衛が二人のダブルスの基盤となっていた。 こちらも攻撃力は申し分無い。 課題はわかっている。 守りだ。荒木・片桐や斎藤兄弟並のレシーブ力が欲しいところだ。 スマッシュ無しフリーのあとは片方がアタック、もう片方がレシーブとなり守りの練習になる。 夏までに守りをどこまで強化できるかが重要になるだろう。 一方シングルス。今日の木村はこちらがメインだ。 最近のメインの練習はバックショットの練習だ。 野村がいない時なので効率はいい。 上のレベルで戦うにはバックショットは必須だった。 だがシングルスプレイヤーの内田も高橋も秋葉も、あまりバックショットが得意ではない。 そんな彼らと、木村は自分自身の感覚を思い出しながら指導するのだった。 木村自身はまだ激しい動きはしない。 焦らず少しずつ、だが確実に彼は復帰してきていた。 共に打つ生徒も、日々木村の上手さに魅了されるのだ。だが木村はもっともっと上手い。 木村に迷いは無い。共に強くなると誓ったから。
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