野村仁 、10月

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それでも野村にだけは思いが届かない。 もう、2週間だ。 日曜。 パソコンで動画サイトを開きながら、海外の大会で活躍する日本の選手の動画を見ていた。 「おっ、おおっ!」 日本人選手の華麗なプレーを見て思わず野村は声を出す。 パソコンに表示された時間を見る。 午前11時。 部活の真っ最中だろう。 (今どんな練習してんのかな……) 自分のいない部活がどうなってるのかが凄く気になる。 正直ずっとそうだった。 バドをしたい気持ちとしたくない気持ちが交差した結果、彼は動けない。 だが今日は気持ちが違かった。 (少し……覗いてみよっかな……) ちょうど学校に教科書も忘れたところだ。 ついでにちょっと覗いてみよう、そんな気になれた。 (内田も怒ってたけどもう許してんじゃないかな) 「ちょ……ちょっと覗くだけ……」 そう呟き立ち上がる。 足の痛み自体は大分引いていた。 気を付ければ何とか自転車にも乗ることができる。 ゆっくりとだが野村は学校に向かうことができた。 学校に着くと、真っ先に体育館に向かう。 不安は色々あったが、頑張って乗り越えようと思えた。 パン パン 羽根を打つ音が聞こえてくる。 胸の鼓動が高まりながら、野村は体育館のドアの小窓から中を覗く。 しかし…… 「あれ?」 野村は小窓から見える範囲を見回したが男子が見当たらない。 木村もいない。 いたのは女子だけだった。 「え?なんで?」 休みなはずがない。どこかに行ったのだろうか。 そうなると、せっかく来た意味も無い。 帰るか、と思ったところだ。 「あれ?君はたしか……」 ヤバイバレた。そう思いながら野村が振り返ると、そこにいたのは東だった。
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