華原 恭

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自分に何ができるか精一杯考えた。 考えて考えて出た結果があれだった。 「父さん、母さん。俺、私立を受けたい。塾に行きたい」 そういうと二人は喜んでくれた。 それだけでなんだか嬉しかった。 二人が笑ってくれるだけで 自分が必要とされてる気がして。 居場所はここでよかったんだと。 春休みも塾。 学校が始まっても塾。 塾がない日は塾に自習をしに行く。 親と約束していた。 だから雛音と遊べなかった。 6年になった今日も塾へと向かう。 雛音には塾にいってることも言えなかった。 ただ嘘をついて誘いを断っていた。 遊びたい。 同じ中学に行きたい。 でも、それ以上に俺は親に愛されたかった。 塾の成績が悪い時や、母親の機嫌が悪いと叩かれることは続いたがそれでもクラスが上がると喜んでくれる両親。 もっと笑って欲しい。 きっと私立に行ったら喜んでくれて、治ると思っていた。 甘かった。 でも小学時代の俺はこれが精一杯だった。
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