華原 恭

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「何で雛音に言ったの?」 初めて母親に歯向かった。 「は?」 俺の口から言いたかったのに。 なんで言うんだ。 母親は怖くてたまらなかったけど、それよりも雛音に伝えてしまった事が許せなかった。 「何いってんの?雛音ちゃん知ってたじゃない」 母親は冷たく笑う。 そうだ、何で知ってたんだろう。 でも 「母さんが何で言うんだよ!」 バチッ 鈍い音が響いた。 それと共に右頬に痛みが。 「うるさいわね、あんたは黙って勉強してればいいのよ!!」 本音だと思う。 母親の。 いつもの俺だったら部屋へと向かうだろう。 でもこの日は 「雛音の家行ってくる」 雛音と話がしたかった。 言い訳するつもりもないし、泣きつくわけでもない。 ただ、俺の気持ちを俺の口から雛音にちゃんと伝えたかった。 まだ痛む右頬。 右頬を抑えながら俺は家を出た。 すぐ隣の雛音の家。 インターフォンをゆっくりと鳴らした。
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