43人が本棚に入れています
本棚に追加
「あら!恭ちゃんじゃない!」
でてきたのは雛音の母親。
ずっと俺の事を恭ちゃんという。
いつまでちゃん付けで呼ぶのか疑問だが、今はそれどころではない。
「雛音いますか?」
雛音の母親はちょっとまってね、とつぶやいた。
「雛音~!!!恭ちゃんよ!」
階段の方に向かって叫ぶ。
どうやら自分の部屋にいるらしい。
「返事がないわね~?恭ちゃん、雛音の部屋行っていいわよ。どうぞ」
「恭」
母親が俺を招き入れようとしたとき、名前を呼ばれた。
「雛音?」
ゆっくりと雛音が姿を現す。
階段をゆっくりと下りて、俺に近づいてくる。
鼓動が速くなった。
あきらかに、いつもの雛音ではない。
「お母さん、ちょっと公園行ってくる」
雛音は俺の顔を見ることなく、靴を履いた。
公園?
いつもは部屋に入れてくれるのに…。
公園とは、家の前にある大きな公園だ。
遊具は少ないものの、土地が広いため犬の散歩コースとしてもよく使われている。
ボール遊びもできるため、昔からよくそこで遊んだ。
「もうすぐ夜ご飯だからすぐ帰ってくるのよ」
母親の声に雛音は無言で頷き、俺のもとへと近づいてきた。
「いこ」
そう小さくつぶやいて、俺と雛音は公園へと向かった。
雛音が妙に冷静で、これからどうなるのか怖かったのを今でも鮮明に覚えている。
最初のコメントを投稿しよう!