華原 恭

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「あら!恭ちゃんじゃない!」 でてきたのは雛音の母親。 ずっと俺の事を恭ちゃんという。 いつまでちゃん付けで呼ぶのか疑問だが、今はそれどころではない。 「雛音いますか?」 雛音の母親はちょっとまってね、とつぶやいた。 「雛音~!!!恭ちゃんよ!」 階段の方に向かって叫ぶ。 どうやら自分の部屋にいるらしい。 「返事がないわね~?恭ちゃん、雛音の部屋行っていいわよ。どうぞ」 「恭」 母親が俺を招き入れようとしたとき、名前を呼ばれた。 「雛音?」 ゆっくりと雛音が姿を現す。 階段をゆっくりと下りて、俺に近づいてくる。 鼓動が速くなった。 あきらかに、いつもの雛音ではない。 「お母さん、ちょっと公園行ってくる」 雛音は俺の顔を見ることなく、靴を履いた。 公園? いつもは部屋に入れてくれるのに…。 公園とは、家の前にある大きな公園だ。 遊具は少ないものの、土地が広いため犬の散歩コースとしてもよく使われている。 ボール遊びもできるため、昔からよくそこで遊んだ。 「もうすぐ夜ご飯だからすぐ帰ってくるのよ」 母親の声に雛音は無言で頷き、俺のもとへと近づいてきた。 「いこ」 そう小さくつぶやいて、俺と雛音は公園へと向かった。 雛音が妙に冷静で、これからどうなるのか怖かったのを今でも鮮明に覚えている。
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