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雛音は一瞬悲しそうな顔をした。
傷つけてしまった事はわかった。
「言えない……か。私たち、何年の付き合いだと思ってるの?」
雛音の問いに俺は黙った。
雛音は俺に近づいてくる。
「恭にとって私って何?何で隠し事するのよ!!!何で黙ってたのよ!ひどいよ恭……私は恭と一緒に中学行けるって思ってた。塾に行ってた事も隠して、嘘ついて……」
雛音は下を向いた。
泣いているのか、怒っているのか、両方だろう。
「雛音……」
雛音の肩に手を置こうとした。
その瞬間、雛音は顔を上げた。
「恭のバカ!もう知らない!」
涙を溜めて、雛音は俺を突き飛ばした。
そして家へと走って行ってしまった。
恭にとって私は何?
好きな人。
大切な人。
だからこそ、私立に行く理由は言えない。
だって雛音は優しいから……きっと俺のためにって言って俺の両親に文句を言うに決まっている。
そしたらあの両親だ。
雛音を傷つけるかもしれない。
雛音に手を上げるかもしれない。
どうなるか、わかってるのに言えるわけないじゃないか。
俺のために誰かが傷つくなんて耐えられない。
雛音が傷つくなんて耐えられない。
雛音ごめん。
言えない。
言えないけど、俺は雛音が大切で大好きで……
でも両親をどうにかしたい、元に戻したいから…俺は私立に行くよ。
雛音と離れる事になっても。
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