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次の日、雛音とは一緒に登校しなかった。
「恭」
教室につくとヤスが声をかけてくる。
「おはよ、何?」
俺は弱々しく応えた。
「塾行ってるって本当か?」
!
ヤスにまで…なんで?
「昨日、神崎が教室に来た」
「え?」
雛音が?
「恭が付き合い悪いのは俺と毎日遊んでるからだと勘違いしたみたいで、俺に殴り込みにきた」
ヤスは続けた。
「俺も違う、俺も神崎と遊んでるって聞いてたっていうと神崎も落ち着いてくれて。そしたら周りにいた奴らが「恭なら駅前の塾に入っていくとこみたよ」って。だからピーンって来たんだ俺も神崎も。恭が塾に行ってるって」
なるほど
そういうことだったのか。
塾は駅前の大きな塾。
一緒の小学校の友達に口止めはしているものの目撃される事はあるだろう。
「なんで塾なんかいってんの?隠さなくてもいいんじゃないの?」
ヤスは私立の事を知らないのか。
昨日の雛音と一緒だな。
「…私立行きたいんだ、俺」
小さな声でヤスに告げた。
ヤスは目が点になった。
そして、え?え?とつぶやきながら頭を整理していた。
ようやく整理がついたのか
「嘘だろ!中学でも一緒につるもうと思ってたのに!」
といってくれた。
「ごめんな、ヤス。まぁまだ試験もしてないし、合格もしてないからわかんないんだけど」
「…神崎には伝えたの?」
俺はゆっくりと頷いた。
「絶交状態」
苦笑しか出なかった。
ヤスはそんな俺を見て、ため息をついた。
「神崎な、昨日言ってたぞ」
「え?」
「恭が遠くに行ってしまいそうで時々怖くなるって」
え?
雛音が?
そんな風に……
「何も言わなくたって、神崎はお前の一番そばにいたんだから感じ取る事はできる。だから恭が隠し事してるって嘘ついてるってずっと気づいてたんだと思うけど」
そしてヤスはまだ続けた。
「お前の口から言ってくれるのずっと待ってたんじゃないかな。やっぱり恭を最後に支えてあげるのは自分だって思ってそうじゃん、神崎って」
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