華原 恭

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こんなにきれいに見える桜も最後かもしれない。 咲き誇る桜を見ながら俺、華原恭(かはら きょう)は思った。 そして、何故桜がきれいに見えるのかもわかっていた。 それは隣に君がいたから。 最後だと思うのは、来年自分は隣にいないから。 まだ君にも言えていない。 いつからだろうか。 君に秘密ができたのは。 黒いふるさびたランドセルを弾ませながら君のもとへ走る。 「雛音!」 桜のほのかなピンクの世界の中、君の漆黒の髪が揺れる。 幻想的で思わず見惚れる。 花びらとともに長い間髪が風になびいた。 「みとれないでよー」 いたずらっぽく君は笑った。 神崎雛音(かんざき ひなね) 君は大切な幼なじみ。 そして、大好きな女の子。
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