華原 恭

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「じゃあな、雛音」 家の前に着き、雛音に別れを告げる。 決して大きくはない似た家にそれぞれ入って行く。 ゆっくりとドアまでの階段を上がる。 「恭……」 ドアの前に立った時、隣から声がした。 右隣の雛音の家を見た。 「今日は遊べる?」 同じくドアの前に立つ雛音。 うつむきかげんで、俺の顔を見ていない。 きっと何を言われるかわかっているから。 俺はその通りの返答をした。 「ごめん。今日も無理」 やっぱりか、そうつぶやいたように見えた。 雛音は家に入って行った。 俺もため息をつきながら家に入る。 春休みに入る前から雛音の誘いを断っていた。 当初は理由を聞かれていたが、今はもう聞かれない。 残り少ないであろう二人の時間を大切にしたかった。 でも、できなかった。 そんな矛盾している自分に対し、でるのはため息。 ごめんな雛音。 心の中でも謝った。 俺を嫌いにならないで。 玄関で恐る恐る靴を脱ぐ。 見慣れている靴が脱ぎ捨てられていた。 今日は、あの人がいる日だ。
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