華原 恭

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「恭、帰ったの?」 ビクッ リビングから母親の声が聞こえた。 「うん、ただいま」 その言葉に返事はなかった。 変わりに、リビングのドアがしまる音がした。 入って来るな そういうことかな。 俺はリビングを無視し、二階へと上がる。 おかえり その言葉いつ以来聞いていないだろうか。 俺は部屋に入り休む暇なく準備に入った。 ズキン お腹の痣が痛んだ。 俺の家族は、もう壊れかけていた。 こんなこと雛音には言えないが。 いつ離婚してもおかしくない状況で、 両親はもう俺を愛してなかった。 壊れかけている家族の絆、それを保つために俺は私立に行かなければならない。 俺の両親は、当時の俺でも聞いたことがあるような有名大学出身だった。 共働きで、すれ違いの生活だったこともあるだろう、気がついた時には遅かった。 二人の仲は最悪だった。 顔を合わせるたびに罵声。 俺はその声を聞きなぎら過ごしていた。 どんどん悪化し、矛先は俺に向けられた。 俺はかしこい方じゃなかった。 その話題が取り入れられ、俺が出来損ないになったのはお前のせいだと言い合っていた。
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