華原 恭

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ある日、母親に叩かれた。 理由はわからなかった。 ただ、叩かれたのだ。 そのうち毎日叩かれるようになり、 もう俺に興味をなくした父親も止めもせず、なにも言わなかった。 俺が出来損ないだからいけないんだ。 そう思った。 毎晩毎晩、部屋で泣いていた。 そんなある夜、いつものように泣いていた。 どうすればいいのかわからなかった。 逃げ出したくてたまらなかった。 雛音 雛音 助けて。 どうすればいい? こんなこと雛音に相談できないけれど 嫌われそうで恐かった。 でも、いつも雛音の笑顔に救われていた。 どんな辛い事があっても、雛音に会うと救われた。 その日も雛音に会いたくて泣き付きたかった。 雛音 窓を見つめた。 すぐそこは、雛音の家。 目に涙をためながら。 声を押し殺しながら。 心の中で雛音を呼んだ。
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