桂美沙

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――ど、どうして? 美沙は心の中で呟いた。 教室はいっきに静寂に包まれた。鼓動が早くなる。心臓の音がより大きく聞こえてきた。心臓の音で居場所がバレてしまうんじゃないかと思うほど張り詰めた空気だ。 逃げたい。逃げ出したい。丸くなって隠れるのがさらに恐怖を煽る。 でも化け物がどこを歩いているかわからない。もしかしたら普通にさっきの進行方向に沿って歩いているだけじゃないか。喋らなくなっただけで。 それならもう少し待てる。 今は前から2番目くらいを歩いているんじゃないか? もう少し…… もう少し待てる。 あとちょっとだけ。 もうちょっとだけ……。 いきなり頭に風が吹いた。美沙は気にしなかった。 しかし再び頭に風が吹いた。今度は気になった。風にしては妙にピンポイントだ。なんだろうと美沙は上を向いた。 「ミーツケタ」
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