第1章【童貞】

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―2010 9/2― 「国政全権委任法が国会通過、いよいよ山田政権のマニフェスト達成が見えて来ました」 「そうですねぇ、世界に類を見ない偉業です」 液晶テレビからそんな声が聞こえる。社会主義人民党の代表、山田太郎は内閣総理大臣として一風変わった政治を行っていた。 「在日米軍が撤収して3ヶ月、臨時会を繰り返しようやく可決されました」 「いやあ実に長かった。しかし国政全権委任法が可決された今、政治決定はよりスムーズになりますよね」 内閣総理大臣に全権を委任するのだから、当然スムーズである。総理大臣がとかく優柔不断ならいざ知らず、山田総理は非常に決断力が有り意志決定が早い。 「自衛隊の解体と警察機構の組織改革をマニフェストに掲げていました。平和で治安の良い素晴らしい国になるでしょう」 「しかし民主主義から一旦離れるのは斬新な発想ですね」 斬新も何も独裁である。民主主義とどっこいどっこい古くから存在した政治のやり方だ。 そんなニュースを見ながら納豆を食べる制服姿の高校生、田辺義則はニュースを特に気にせず味噌汁を飲んだ。
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