第1章【童貞】

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「じゃあ学校行ってくるから」と父親に向かって言うが応答が見られない。義則は判っていた様に頷き運動靴を履いた。綺麗な玄関から出ると、小さな音楽プレイヤーのイヤホンを両耳に入れ自転車に跨った。 「寒いっての」 独り言、自転車を勢い良く漕いでタイル敷きの歩道を学校へ急ぐ。車道はバス通りで、近くに駅や商店街が有るから年中かなり混んでいる。 ふと振り向くと、警察官が陸上選手よろしく走っていた。見れば何かを叫んでいるし義則を指差している。仕方ないから左手でブレーキを握った。 「何すか?」 警察官のジェスチャーを見るにイヤホンを外せと言っている様だ。肩で息をし、濃紺色の防刃ベストまで汗が染みている。 「はいはい、何すか?」 音楽プレイヤーを止めてからイヤホンを抜く。 「君ねぇ、イヤ……イヤホンしながら、走ったら危バ、危ないじゃないかッ!」 非常に聴き取り難いが、何となく意味は汲み取れた。 「あーすんません、気を付けまーす」と棒読み、警察官がイライラした様に右腕を振る。
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